Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
憤然と又八は起った。
かりにも、両刀をおびている青年が、四つ脚の真似をしているのを、樹の上から、若い女に見られていた恥辱を突然気づいたからである。
キャッーンと、ただならぬ一疋の悲鳴が起ると、すべての犬が、又八の方へ眼を向けた。そして彼の手にある白刃と、その下に斬り仆された友達の死骸を見ると、犬は、どっと一所へかたまって痩せた脊ぼねを波のようにみな尖らせた。
「これでもか」
刀を振りかぶって犬の中へ駈けこむと、彼の顔へぱっと砂をくれて、犬は八方の闇へちらかった。
「――女ッ、おいッ、降りて来い! 降りて来い!」
空へ向って呼ぶと、松の梢のあいだで、り、り、り、りん……と金属製の美い音が揺れた。
「おや、朱実じゃないか。――おいッ」
袂の鈴の音に覚えがあった。鈴を帯や袂につけている女子は、なにも朱実だけに限ったこともないが、仄かに白く見える顔の輪郭も、なんだか似ている気がしたのである。
――とやはり朱実の声だった。非常に驚いた様子で、
「誰? ……誰? ……」
「又八だ、わからないか」
「えっ、又八さんですって」
「なにしているんだ、そんな所で。――犬なぞ怖がるおまえでもないくせに」