Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
彼の期待は外れなかった。ずいぶん時経ってからであったが、やがて、畦道からのそのそと此方へ来る人間が見える。
「……なんだ薪拾いか」
他人の山の薪を盗む土民は、一背負いの薪のために、夜を選んで、随分あぶない崖も越えるが、もしそんな者だったら――と城太郎はふとつまらない待ちくたびれを感じた。しかし再び、驚くべき事実を眼のあたりに見せられて、彼の好奇心は、満足を通り越え、恐怖の顫えに襲われた。
――田圃の畦から往来端へ上がった人影は、彼の小さい影が、樹の陰にへばりついているとも知らず、悠々、彼の側を通って行ったが、そのせつな、城太郎はよくも、
「あっ!」
という声を出さなかったものである。
なぜなら、それは慥かに城太郎が先頃から身を託している奈良井の大蔵に違いないからである。
けれど彼はまたすぐ、
「いや、人間違いだろ?」
と、自分の眼で見た瞬間のものを、打ち消そうとした。
そう打ち消してみると、間違いかとも信じられた。――彼方へすたすたと行く後ろ姿を見れば、黒い布で顔をつつみ、黒い膝行袴や脚絆もはいて、足も身軽なわらじ穿きではないか。
そして背中には、なにやら重たげな包みを確乎と背負っている。