Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「三沢伊織というんだけれど、お父さんは、百姓だから、ただ三右衛門といっていた」
「おまえは」
「三之助」
「身寄りはあるのか」
「姉さんがあるけれど、遠い国へ行っている」
「それきりか」
「うん」
「明日からどうして生きてゆくつもりか」
「やっぱり馬子をして」
と、いってすぐ、
「おじさん。――おじさんは武者修行だから、年中旅をして歩くんだろ。おらを連れて、何処までもおらの馬に乗ってくれないか」
「…………」
武蔵は先刻から、白々と、明けてくる曠野を見ていた。そして、この肥沃な野に住む人間が、どうして、かくの如く貧しいかを考えこんでいた。
大利根の水の、下総の潮があって、坂東平野は幾たびも泥海に化し、幾千年のあいだ、富士の火山灰はそれを埋め――やがて幾世をふるうちに、葭や蘆や雑木や蔓草がはびこって、自然の力が人間に勝ってしまう。
人間の力が土や水や自然の力を自由に利用する時、はじめてそこに文化が生れる。坂東平野はまだ人間が自然に圧倒され、征服され、人間の智慧の眸は、茫然とただ天地の大をながめているにすぎない。
陽がのぼると、そこらを、小さい野獣が跳ぶ、小鳥が刎ねる。