Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
彼の気持は満ち足りなかった。
一、二年前から、彼は、
――人に勝つ。
剣から進んで、剣を道とし、
――おのれに勝つ。人生に勝ちぬく。
という方へ心をひそめて来て、今もなおその道にあるのであったが、それでもなお、彼の剣に対する心は、これでいいとはしない。
(真に、剣も道ならば、剣から悟り得た道心をもって、人を生かすことができない筈はない)
と、殺の反対を考え、
(よしおれは、剣をもって、自己の人間完成へよじ登るのみでなく、この道をもって、治民を按じ、経国の本を示してみせよう)
と、思い立ったのである。
青年の夢は大きい、それは自由である。だが、彼の理想は、今のところ、やはり単なる理想でしかない。
その抱負を実行に移すには、どうしても政治上の要職に就かなければできないからだ。
しかし、この荒野の土や水を相手としてそれをやる分には、要職もいらなければ、衣冠や権力をもって臨む必要もない。武蔵は、そこに熱意と歓びを燃やしたのであった。
四
木の根瘤を掘る。また、石ころを篩う。
高い土を崩してならし、大きな岩は、水利の堤にするために並べる。
そうして日々、晨は未明から、夕方は星のみえる頃まで、武蔵と伊織とが、孜々として、法典ヶ原の一角から開墾に従事していると、時折、河原の向うに、通りがかりの土民たちが立ち止って、