Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「おら。義経は好きだ」
と、刎ね起きて、坐り直した。そして、
「先生、天狗ってほんとにいるの」
「いるかも知れぬ。……いやいるな、世の中には。――だが、牛若に剣法を授けたというのは、天狗ではないな」
「じゃあ何?」
「源家の残党だ。彼らは、平家の社会に、公然とは歩けなかったから、皆、山や野にかくれて、時節を待っていたものだ」
「おらの、祖父みたいに?」
「そうそう、おまえの祖父は、生涯、時を得ず終ってしまったが、源家の残党は、義経というものを育てて、時を得たのだ」
「おらだって――先生、祖父のかわりに、今、時を得たんだろ。……ねえそうだろう」
「うむ、うむ!」
武蔵は、彼のその言葉が気に入ったとみえ、いきなり伊織の首を寝たまま抱きよせて、脚と両手で手玉に取って天井へ差し上げた。
「偉くなれ。こら」
伊織は、嬰児が欣ぶように、擽ッたがって、きゃッきゃッといいながら、
「あぶないよ、あぶないよ先生。先生も僧正ヶ谷の天狗みたいだなあ。――やあい天狗天狗、天狗」
と上から手をのばし、武蔵の鼻を抓んで戯れ合った。
四
五日たっても十日たっても、雨はやまなかった。雨がやんだと思うと、野は洪水に漲って、容易に濁流が退かないのである。