Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

「な、なにを」

「いや、おまえ達の仲間でいうことは、なかなかおもしろいと申すのだ」

「たわ言を聞きに来たんじゃねえ。どっちとも、はやく返答しろい」

熊は、自分の声に、昼間の酔をよけいに顔へ出して呶鳴った。額の汗が、西陽に光って、見る者の眼にも暑苦しい。それでもまだ、熊は威嚇が足らないと思ったか、胸毛だらけな諸肌を脱いで、

「返答に依っちゃ、ただは引退がらねえぞ。さ、どっちとも、早く吐かせ」

肚巻から出した短刀を、蕎麦箱の前へ突き立てて、あぐらの脛をさらに大きく組み直した。

武蔵は、笑みをつつみながら、

「――さ。どっちにしたがよいかなあ」

汁茶碗の手を少し下げ、箸の手を蕎麦箱へ伸ばして、蕎麦のたまにたかっている塵でも取っているのか、何か挟んでは、窓の外へ抛っていた。

「…………」

てんで相手にされていないふうなので、熊は青筋を太らせて、ぐいと眼だまを剥き直したが、武蔵はなお黙然と、蕎麦のうえの塵を箸で取り退けている。

「……?」

ふと、その箸の先に気のついた熊は、剥いた眼を、いやが上にも大きくして、息もせずに、武蔵の箸に、気もたましいも抜かれてしまった。

蕎麦の上にたかっている黒いものは、無数の蠅であった。