Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
。
そこで彼は、折角、彫るところの物が、観音の形になりかけると、それを削って、また彫り直し、また乱れては、また彫り直し――何度もそれを繰り返しているうちに、ちょうど鰹魚節を費い削ってしまうように、与えられた天平の古材も、いつか八寸に縮み、五寸ほどに痩せ、もうわずかに、三寸角ぐらいまで、小さくしてしまっていた。
――時鳥の声を二度ほど聞いたと思ううちに、彼は半刻ほど、とろとろと眠った。ふと眼をさますと、彼の健康な体力は、頭の隅々の疲労まで洗い去っていた。
「今度こそ」
と、起きると共にすぐ思う。
裏の井戸へ行って、顔を洗う、口を嗽ぐ。そして彼は、もう暁に近い灯を剪り直し、気を革めて、また、彫刀を持ち直した。
サク、サク、サク……
と、眠らない前と、眠った後とでは、小刀の刃味までが違ってくる。古材の新しい木目の下には、千年前の文化が細やかな渦を描いている。もうこれ以上彫り損じては、この貴重な古材はふたたび木屑から一尺の角材に帰るよしもないのだ。どうしても、今夜はうまく彫り上げなければならないと思う。
剣を把って敵に立ち対った時のように、彼の眼はらんらんとし、彼の小刀には力がこもっていた。