Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「どっちにしたって、三日もかかる所じゃないじゃないか。狐にでも化かされていたんだろ」
「よく知ってるなあ。おばさん、狐の親類かい」
揶揄いながら伊織が、梯子段をのぼりかけるのを、内儀さんはまた、あわてて止めて、
「もう、おまえの先生は、此宿には泊っていないよ」
「嘘だい」
伊織は、ほんとにせず、駈け上がって行ったが、やがてぼんやり降りて来て、
「おばさん、先生は、他の部屋へ代ったんだろ」
「もうお立ちになったというのに疑ぐりぶかい子だね」
「えっ、ほんとかいっ」
「嘘だと思うなら、帳面をごらんよ、この通り、お勘定だって済んでいる」
「ど、どうしてだろう、どうして、おらの帰らないうちに、立っちまったんだろ」
「あんまり、お使いが遅いからさ」
「だって……」
伊織は、ベソを掻き出して、
「おばさん、先生は、どッちへ立って行ったか、知らないか、何か、いい置いて行ったろ」
「何も聞いてないね。きっと、おまえみたいな子は、お供に連れて歩いても、役に立たないから、捨てられたんだよ」
眼いろを変えて、伊織は往来へ飛び出した、――そして西を見、東を見、空をながめて、ぽろぽろ泣き出した様子に、中剃の禿を櫛の歯で掻きながら、お内儀はケタケタ笑った。