Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
――が。あわれはここにも一人いた。それらの話を、側で聞きながら、しょんぼり側に立っていた伊織。
(生れたっきり知らない姉)
と、観念していたうちは会いたくも淋しくもなかったが、
(世にある人)
と、教えられ、
(大和の柳生にいる)
と聞いてからは、漂う海に一つの陸を見つけたように、生れてから一遍に溢れわいた思慕と肉親への肌恋しさが――これは抑えるべくもなく、ずいぶん連れの権之助をも困らしたほど、きょうまでは楽しみにして、此処まで来たに違いないのである。
「…………」
今にも泣きたそうな顔しているが、伊織は泣かない。
泣くには何処か人のいない所へ行って大声で泣きたいのだ。――権之助が兵庫から訊ねられて、いつまでも江戸の話をしているので――伊織は辺りの草の花など眼に拾いながら、大人の側からだんだん離れて行った。
「何処へ行くだい」
丑之助も、後から来た。なぐさめ顔に、伊織の肩へ手を廻して、
「泣いてんのけ?」
伊織はつよく首を振った。眼から涙が飛び散った。
「泣くもんか。そら、泣いてなんかいないよ」
「オヤ。山芋の蔓があるぜ。山芋掘る術知ってるか」
「知ってらい。おらの故郷にだって、芋はあら」