Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
幸村は、客にきかれて、客の耳ざわりになっていることを、初めて気づいたように、
「お。あの音でおざるか。あれはお恥かしいが、生活の援けに、家族どもや子飼いの召使どもにやらせておる組紐打ちの細工場で、紐打ちの木車を掛けている音でござります。……自分たちは、職業でもあり、朝夕耳に馴れていますが、お客には、おうるさかろう。……早速、申し遣わして、木車の機を、止めさせましょう」
手をたたいて、大助の嫁をよびかける容子に、
「いや、それには及ばぬこと。お職所の邪げしては、かえって居辛うおざる。平に、平に」
と、佐渡は止めた。
ここの裏座敷は、母屋の家族たちがいる所に間近いとみえて、出入りの者の声や、厨の音や、どこかで銭をかぞえる音や――前の離室とはだいぶ空気がちがっている。
(はて? ……。こうもしなければ食えないほどな境遇だろうか)
佐渡は怪訝ったが、まったく大坂城からの貢ぎがないとすれば、落魄れた大名の末路はこうもあろうかと思わぬでもない。家族が多い、農事には馴れない、ある限りの品は、売喰いしていつかは尽きてしまう。
あれこれ、思いすぎたり、惑ったりしながら、佐渡は、蕎麦をすすった。