Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
「店の者」
と小次郎は、梱の一つに腰かけて、帳場の佐兵衛をふり顧りながら、扇を胸にうごかしていた。
「船が出るまで、ここに待っておるのでは、暑うてかなわぬが――便船はまだ着いていないのか」
「いえ、いえ」
と、送り状に忙しい筆をうごかしていた佐兵衛は、帳場ごしに川尻を指して、
「お召しになる巽丸は、あれに着いておりますが、積荷よりは、お客様方のお越しのほうが、滅相おはやく見えられましたので、船方衆にいいつけて、ただ今あわててお坐り場所を先に整えさせておりますので」
「同じ待つにも、水の上はいくらか涼しかろう。はやく船へ行って休息したいものだが」
「はいはい。もういちど手前が行って急がせて参りましょう。しばらく、御辛抱を」
佐兵衛は汗をふく暇もない顔つきして、すぐ土間から往来へ駈け出したが、そこの物陰に佇んでいた伊織のすがたを横目で見ると、
「伊おじゃないか。この忙しいのに、棒を呑んだように、そんな所に突っ立っている奴があるか。お客様たちへ、麦湯でも上げたり、冷たい水でも汲んで来てさしあげろ」
と叱り捨てて行った。
「へい」
と、答える振りはしたが、伊織はついとそこから駈けて、土蔵のわきの露地口にある湯沸し場の陰へ来てまた、佇んでいた。