Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme

Aozora Bunko

「――そうだ。たとい何と仰っしゃられようと」

武蔵は、くわっと、体が燃えるように思った。――怒って振り上げたあの鉄拳を横顔に受くるまでも、一言の教えをここで乞わずにまたいつの日会う折があろう。何万年とも知れぬ悠久な天地の流れのうちに、六十年や七十年の人生は、さながら電瞬のような短い時でしかない。その短い一生のあいだに、会い難き人に会うというほど尊いものはない。

「――その尊い機縁を」

と、武蔵は、眦に熱涙をためて、愚堂和尚の去りゆく影を見つめた。そしてその機縁を、やわか今、逸してなろうかと思った。

どこまでも!

一言の答を得るまでは。

武蔵はやにわに追いかけた。そして愚堂が歩く方へ、彼も足を早めて、尾いて行った。

知ってか。知らずか。

愚堂は、八帖の方へは、帰らなかった。恐らくその足は、ふたたび八帖の寺へ帰る意志はなく、もう水と雲とを住居としている心なのであろう。東海道へ出て、京へさして行くのであった。

愚堂が、木賃に泊れば、武蔵は木賃の軒端に寝た。

朝、又八が、師の草鞋の紐をむすんで立つ姿を見て、武蔵は、友人のために欣しかったが、愚堂は武蔵のすがたを見ても、言葉もかけてくれなかった。