Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
九
もし変事ありと、下ノ庄にでも聞えたら、本位田家の縁類たちが、野を呼び、里を挙げて、襲撃して来ることは知れきっている。
「駈けられるかい。お通さん」
「ええ。だいじょうぶ!」
二人は、ずっと以前の、小娘と小童頃を思い出しながら、闇から闇へ、息のきれるまで駈けた。
九
もう三日月の宿で、起きている家は、一軒か二軒。
その一つの灯は、宿場にたった一軒の旅籠だった。
鉱山がよいの金商人だの、但馬越えの糸屋だの行脚僧などだのが、ひとしきり母屋でさわいでいたが、思い思いに寝入ったらしく、燈は母屋を離れた狭苦しい一棟にしか残っていなかった。
年下の男をつれた駈落ち者――とでも間違われたに違いない。そこは旅籠の年寄が、繭を煮る鍋や紡ぎ車をおいて、ひとり住んでいる所だったがお通と城太郎のためにわざわざ空けてくれたのだった。
「……城太さん、それでは、お前も江戸表で、武蔵様にはお会いすることができなかったのですね」
その後のはなしを、彼から逐一聞いて、お通は、うら悲しそうにいう。
城太郎は、彼女も、木曾路でちりぢりになって以来、今もってその人に巡り会わないでいる――という傷ましい述懐を聞いて、何だか語るにも堪えないような気持がするのだった。