Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme

Aozora Bunko

六

「……そうじゃ。ともあれ、一度やしきへ戻って」

ばばは、そのまま去りかけたが、またふと返って来て、お通の冷たい体を、窟の中へ抱え入れた。

入口は狭いが、なかは思いのほか広い。遠い昔、求道の行者が、趺坐していた跡かのような所も見える。

「オオ酷や……」

ふたたび、ばばがそこから這い出ようとした頃、窟の口はまるで滝だった。そして奥のほうまで真っ白に飛沫が吹きこんで来た。

六

出ようとすれば、いつでも出られる身になってみると、この豪雨に、何も強いて、濡れに出て行くことはない。――

「やがて、夜も明けように」

そう考えて、ばばは、窟の中につぐなんだまま、暴風雨のやむのを待っていた。

が、その間、真の闇のなかに、お通の冷たい体と、一つにいるのが、ばばは、恐ろしかった。

白い冷たい顔が、責めるように始終、自分を見ている気がする。

「何事も、約束事じゃ。成仏してたもよ……怨むなよ」

ばばは、眼をつぶって、小声に経を誦し始めた。経を誦している間は、苛責も忘れ、恐さもまぎれた。幾刻もそうしていた。

チチ、チチ、と小禽の声がふと耳に沁む。

ばばは、眼を開いた。

洞窟が見えた。