Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
世の潮路
一
まるで、うつつかのように彼方を指さし、もつるる舌に、顔じゅうに、異様な悲涙を湛えていった。
世の潮路
一
翌年のことだった。詳しくいえばその歳は、慶長十七年、四月にはいったばかりの頃である。
泉州の堺港からは、その日も、赤間ヶ関へ通う船が、旅客や荷を容れていた。
廻船問屋の小林太郎左衛門の店にやすんでいた武蔵は、やがて船が出るとの報らせに、床几を立って、
「――では」
と、見送りの人々へ、挨拶をして、軒を出た。
「ご機嫌よう」
斉しく、そういいながら、見送り人たちは、武蔵を囲んで、船着きの浜まで歩いて行った。
本阿弥光悦の顔が見えた。
灰屋紹由は病のよしで来られなかったが、息子の紹益が来ていた。
紹益は美しい新妻を連れていた。その新妻の麗しさは、人目をそばだたせるものがあった。
「あれは、吉野やないか」
「柳町の?」
「そうじゃ、扇屋の吉野太夫」
と、袖ひきおうて囁いた。
武蔵は、紹益から、
(わたくしの妻で……)
とは引き会わされたけれど、前の吉野太夫であるとは紹介されなかった。
また、顔にも、覚えがない。扇屋の吉野太夫ならば雪の夜、牡丹を焚いてもてなされたことがある。