Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
蛸釣舟や、荷舟や、幾つかの舟影は見えたが、彼女の待つ堺港から立った豊前通いの便船は、まだ帆影すら見えて来ない。
「…………」
ばばは、鍋をかけ、火口をのぞいている。粥はやがてくたくたと煮えて来た。
徐々に、雲は暗くなる――
「はて、遅いのう。遅くも夕方までには着こうとのことじゃったが」
波の障り、風の障りもない海なのに――と、ばばも、待つ船を、頻りと待ちあぐねて、沖を見てはつぶやいた。
いうまでもなく。
この夕方、ここに寄る予定の便船というのは、つい昨日、堺港を出た太郎左衛門船のことで、それには、小倉へ下る宮本武蔵が便乗したと――早くも山陽の街道筋には知れ渡っていた。
うわさを、聞くと同時。
姫路藩の青木丹左衛門の子息城太郎は、すぐ使いを走らせて、讃甘の本位田家へ知らせた。
知らせをうけたばばは、その吉報をたずさえて、またすぐ、村の七宝寺へ駈けた。お通は、そこに病を養っていた。
去年の秋の末頃、暴風雨の夜、佐用山の窟へ、おばばを救いに行って、却っておばばの酷い打擲にあい、気を失ってしまったあの時の明け方から――ずっと続いて、意識は元に蘇えっても、体のぐあいは、前のようにすぐれなかった。