Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
「七宝寺に、戻っております。……去年、秋の頃から」
「なに、故郷に」
「……ええ」
初めて、彼女の眸は、武蔵をじっと見た。
深い湖のように、眼は濡れていた。睫毛は、からくも溢れるものを支えていた。
「故郷……。孤児のわたくしには、人のいう故郷はありません。あるのは、心の故郷だけです」
「でも、ばば殿も、今では其女にやさしゅうしてくれる様子。何よりも、武蔵は欣しい。静かに病を養って、其女も幸せになってくれよ」
「今は、幸せでございます」
「そうか。それを聞いて、わしも少しは安んじて行かれる。……お通」
膝を折った。
ばばや権之助の人目を感じるので、彼女は居竦んだまま、よけい身をちぢめたが、武蔵は誰が見ていることも忘れていた。
「痩せたなあ」
と、掻き抱かぬばかり、背に手をのせて、熱い呼吸を弾ませている彼女の顔へ顔を寄せて、
「……ゆるせ。ゆるしてくれい。無情い者が、必ずしも、無情い者ではないぞ、其女ばかりが」
「わ、わかっております」
「わかっているか」
「けれど、ただ一言、仰っしゃって下さいませ。……つ、妻じゃと一言」
「分っておるという口の下に。――いうては、かえって味ないもの」