Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
――来ている! 待構えている。
巌流の姿があれに。
と、指さそうとしたが、武蔵の様子を窺うと、武蔵の眼もすでにそこへ行っている。
眸を、そこに向けながら、武蔵は、帯に挟んで来た渋染の手拭をぬいて、四つに折り、頻りに潮風にほつれる髪を撫で上げて鉢巻した。
小刀は前に帯び、大刀は、舟の中へ置いてゆくつもりらしく――そして、飛沫に濡れぬ用意に、蓆を着せて、舟底へ置いた。
右手には、櫂を削って木剣とした手作りのそれを握った。そして舟から起ち上がると、
「もうよい」
と、佐助へいった。
――だが。
まだ磯の砂地までは、水面二十間もあった。佐助は、そういわれてから、二ツ三ツ大きく櫓幅を切った。
舟は、急激に、ググッーと突き進んで、とたんに浅瀬を噛んだものとみえる。舟底がどすんと持ち上がったように鳴った。
左右の袴の裳を、高くげていた武蔵は、その弾みに、海水の中へ、軽く跳び下りていた。
飛沫も上がらないほど、どぼっと、脛の隠れるあたりまで。
ざぶ!
ざぶ!
ざぶ……
かなり早い足で、武蔵は、地上へ向って歩き出した。
引っ提げている櫂の木剣の切っ先も、彼の蹴る白い水泡と共に、海水を切っている。