Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「――や? 奇態な奴」
果たせるかな、想像以上なものを見た。
木の根に縛られている又八と、その又八を三重四重に黒々と取り巻いて、彼の肉片でも要求しているような群犬の旋風である。
犬に正義をいわせれば、復讐というかも知れない。又八の刀は先刻犬の血をそこらへ撒いた。彼の体には犬の血のにおいが沁みている。
そうでなく、犬の智能を人間の極く低い程度として見ると、こいつ意気地のない奴らしい、弄ってやれと、面白がっているのかも知れぬ。また、妙なかっこうをしている奴、木を背負って坐っている、泥棒か、躄か、なんだろうかと不審を起して、吠えかかっているのかも分らない。
それがみな狼に似て、腹といえば薄く、脊骨は尖り立ち、歯はヤスリに削けたようなのであるから、孤立無援の又八としては、先刻の六部や小次郎よりも、時間的に数十倍もまさる恐怖だった。
手も足もきかないので、彼の戦闘は、顔と言葉とで防ぐほかなかった。しかし、顔は武器にならないし、言葉は犬に通じない。
そこで、犬にも通じる言葉と、犬にも受け取れる顔つきの二つをもって、先刻から悪戦苦闘の防禦に必死なところであった。