Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

ない。

(花田橋で別れたきり、会えもしない、話せもしない……。それでも自分はなにかしら楽しい。沢庵さんは可哀そうなというけれど、こんな幸福でいるわたしが、どうして沢庵さんの眼には、不幸に見えるのかしら……)

針のむしろに坐って針の目を運んでいる間も――待ちたくない人を待って暗い淋しい中に佇んでいる間も――彼女はひとりで楽しむことに楽しんでいるのだった。そして他人には空虚に見える時が、いちばん彼女の生命の充実している時だった。

「……お通」

婆の声ではない。――誰かこう暗がりから呼ぶ者があった。お通はわれに返ったように、

「……え。どなたです」

「おれだよ」

「おれとは」

「本位田又八だ」

「えっ?」

跳び退いて――

「又八さんですって」

「もう声まで忘れたかい」

「ほんに……ほんに又八さんの声ですね。婆様に会いましたか」

「お婆は、彼方に待たせておいた。……お通、おまえは変らないなあ。七宝寺にいた時分と――ちっとも変っていない」

「又八さん、あなたはどこにいるんですか。暗くてあなたの姿はわかりません」

「そばへ行ってもいいかい。……おれは面目ない気がして、先刻からここへ来ていたが、しばらく後ろの闇にかくれて、おまえの姿を見ていたんだ。