Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
――けれど今の紹由殿の代になってからは、もうその家業はやめて、この堀川で余生を穏やかに送っているわけですが」
と、光悦はそこで彼方を指さして――
「見えましょう、此処から。あの見るからに閑雅な門のある一構えが、灰屋どののお住居です」
「…………」
武蔵はうなずきながらふと、左の袂の先を、袂の外から握っていた。
(……はてな?)
と光悦の話を聞きながら考えているのであった。
――何が入っているのだろうか、右の袂は夕風がふいても軽くうごくが、左の袂がすこし重い。
懐紙はふところにある。莨入れは持たないし――他にべつに何も入れてある覚えはないが――とそっと手を落して、袖口に出してみると、よく鞣してある菖蒲色の革紐が、いつでも解けるように、蝶むすびに束ねて入れてあったのである。
(……おお?)
光悦の母の妙秀尼が入れておいてくれた物にちがいない。これを革襷にと。
「…………」
袂の中の革襷をにぎりながら、武蔵は振向いて、思わず頬へのぼってくる微笑を後ろの者へ見せた。
――その前からとく気がついていたことではあるが、本阿弥の辻を出るとすぐ、自分の後ろから一定の距離をおいて、のそのそと後を尾行て来る三人連れがあったのである。