Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
二
二
光悦は、指に絵筆をはさんでいた。膝には一帖の懐紙が載っている。その懐紙には、彼が先刻から丹念に写生していた枯野の流れが描きかけになっていた。そばに散らかしてある反古にも皆、同じ水の線ばかりが手習いでもするように描いてあるのであった。
――ふと、振向いて、
(どうなされたのです?)
と問うように、光悦は、下男のうしろに顫いている母のすがたと、そこに立っている武蔵のすがたとを静かな眼ざしで見くらべた。
その穏やかな眸に触れた時、武蔵は自分の気も和んでくる心地がした。しかし親しみというには余りに遠いものなのだ。自分らの近くには見当らない型の人間であって、そのくせ非常に懐かしみを覚えさせる眸なのである。腹の豊かなように、底の深い光をたたえて、その眼はまたいつのまにか、武蔵に対して、旧知のような笑みをにこにこ示していた。
「御牢人さま。……なんぞ母が過ちでもいたしましたかな。せがれの私がもう四十八にもなりまする、この母の年もそれでお察しくださいませ。体はすこやかでございますが、ちと、眼がかすむなどとこの頃は申しまする。母の粗相は幾重にも私がおわびいたしましょう。