Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
二
その影に従いて、もひとつ小さい影が月の道を転がって来る。近づいてから、それはその男の連れている犬だとわかった。
「…………」
手足の先にまでこめていた或る力を急に抜いて、武蔵は無言のまますれちがった。
犬を連れた通行人は、通り過ぎてから遽に振向いて声をかけた。
「お武家さま。お武家さま」
「……わしか」
四、五間を隔てたまま、
「さようでございます」
腰のひくい凡下だ。職人袴に烏帽子をかぶっている。
「なんだな?」
「ひょんなお訊ねをいたしますが、この道筋に、明々と点して起きていたおやしきはございませぬかな」
「さ。気がつかずにまいったが、なかったように思う」
「はて、それでは、この道筋でもないかしらて?」
「なにをさがしておるのか」
「人の死んだ家でございます」
「それならあった」
「お、お見かけなさいましたか」
「この深夜だが、笙やひちりきの音がもれていた。そこではないか、半町ほど先だった」
「違いございません。先に神官方が、お通夜に行っておりますはずで」
「通夜にまいるのか」
「てまえは鳥部山の柩造りでございまするが、うかつにも、吉田山の松尾様と合点して、吉田山へお訪ねいたしましたところ、もう二月も前にお移りになったのだそうで……いやもう、夜は更けて問う家とてはございませぬし、この辺りも知れ難いところでございますなあ」