Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
三
三
公卿侍の顔は、自分の持ち歩いている松明の油煙で、鼻の穴まで黒く煤けてい、狩衣も夜露や泥でひどく汚れている。
「や? ……」
と、行き合った最初に、なにか驚いたような声を出したので、不審に思って、武蔵がじっとその顔を凝視すると、急に少し恐れを抱いたように、
「……あの、あなた様は」
と、ひどく低く頭を下げ、
「もしや、宮本武蔵殿と仰せられはいたしませぬか」
と、問う。
武蔵の眼が、ぎらっと松明の赤い光の中に光った。――当然な警戒だったのはいうまでもない。
「……宮本殿でございましょうな」
重ねて、その男は訊ねたが、恐いのだ、武蔵の黙っている形相の中には、人間のなかでは滅多にみつけないものがあったにきまっているから――そう訊きながらも、男の体は浮腰になっていた。
「誰だ? おん身は」
「はい」
「何者だ?」
「はい……烏丸家のものにござりますが」
「なに、烏丸家の……。わしは武蔵だが、烏丸家の御家来が、今頃、こんな山路へなにしに?」
「ア。……ではやはり宮本殿でござりますな」
いうと、その男は、後も見ずに山を駈け下ってしまった。松明の火が、赤い尾をひいて、見る間に、麓へ沈んで行った。