Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

「だから、人は知らないが、お通さん、武蔵という男は、そんな男なのだ。もっと、露骨にいえば、そなたのことを考え出して、ふと囚われているときは、五体も焦かれる気がするが、心が、剣の道に醒めると、お通さんのことなんか、頭の隅へすぐ片づけてしまう。いや、心の隅にも失くなってしまう。この体、この心の、どこをさがしたって、お通さんの存在などは芥子粒ほどでもなくなってしまうのだ。――また、その時が、武蔵はいちばん楽しくて生きがいのある男となって歩いていたのだ。――わかったろう、お通さん。そういうわしに向って、お通さんは、心も体もすべてを賭して、今日まで一人で苦しんで来ている。すまないと心では思っても、どうしようもない。……それが自分なのだから」

――不意に、お通の細い手は、武蔵の逞しい手頸を掴んだ。

もう眼は泣いていなかった。

「……知ってます! そ、そんなことぐらい……そういう貴方であるぐらいなこと……し、しらないで……知らないで恋をしてはまいりませぬ」

「さすれば、わしがいうまでもなく、この武蔵と共に死のうなどという考えはつまらぬことと分っておろうが。わしという人間は、こうしているわずかな一瞬こそ、なにも思わず、そなたに心も身も与えているが――一歩別れて、そなたの側を離れれば、そなたのことなど、おくれ毛一筋ほどにも心