Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

おらだって、口惜しくねえことがあるものか。……おらのほうが、おっかあよりも、どんなに、口惜しいか知れねえけれど」

と、言葉も、とぎれとぎれにしか聞き取れない。

「大きななりをして、何を泣く――」

こう三ツ児でもたしなめるように、しっかりした声で――しかし静かに叱っているのは、かの老母に間違いなく、

「それ程、無念と思うなら、この後は心を戒めて、一心に道を究めて行くことじゃ。……涙などこぼして、見苦しい。その顔を拭きなされ」

「はい。……もう泣きませぬ。昨日のような不覚なざまをお目にかけました罪は、どうかお宥し下さいまし」

「――とは叱りましたが、深く思うてみれば、下手と上手の差。また、無事がつづくほど、人間は鈍るという。そなたが負けたのは、当り前なことかも知れぬ」

「そうおっかあにいわれるのが、なによりおらあ辛い。平常も朝夕に、お叱りをうけながら、昨夜のような未熟な負け方。あんなざまでは、武道で立つなどという大それた志も、われながら恥ずかしい。この上は、生涯、百姓で終るつもりで、武技を磨くよりは鍬を持ち、おっかあにも、もっと楽をさせまする」

何事を歎いているのかと、初めは武蔵も他事に聞いていたが、どうやら、母子の対象としている者は、自分以外の他人ではないらしい。