Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
三
それでも敗れたら、お前の気の済むように、杖を折って、志を断つもよかろうが――と。
ふすまの陰で始終の事を聞いてしまった武蔵は、
(さて、困ったことが……)
と、当惑しながら、そっと去って、ふたたび自分の寝床のうえに坐りこんだ。
三
どうしたものだろう?
やがて、自分が顔を見せれば、必ず母子の者から、試合を求められるに違いない。
試合えば、自分は、きっと勝つ。
武蔵はそう信じる。
けれども、今度もまた、自分に敗れたなら、あの権之助は、今日まで誇っていた杖の自信を失って、ほんとに志を断つであろう。
また、わが子の達成を、唯一の生きがいとして、貧困の中にも子の教育を忘れずに今日まで来た――あの母親の身になったら、どんなに落胆するだろうか。
「……そうだ、この試合は、外すに限る。だまって、裏口から逃げ出そう」
縁の戸をそっと開けて、武蔵は外へ出た。
もう朝の陽が木々の梢から薄白くこぼれている。ふと納屋のある片隅を見ると、きのうお通にはぐれて此家へ拾われて来た牝牛が、今日は今日の陽を豊かに浴びて、そこらの草を喰べていた。
(おい、達者で暮せよ)
そんな気持がふと牛に向ってもわくのであった。