Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

「おかしいなあ?」

と、怪訝らざるを得ない気持に囚われてしまう。

「来ないわけはないが?」

と、どうしても思う。

この高原の嶺を境にして、道は甲州、中山道、北国街道の三方にわかれているし、水はみな北へ駛って、越後の海へ落ちてゆく。

奈良井の大蔵が、たとい善光寺平へ出るにしても、中山道へ向うにしても、ここを通らないという理窟は考えられない。

だが、世間のうごきを、理窟で推してゆくと、とんだ間違いが往々に起る。何か急に、方角を変えたか、まだ手前の麓に泊まっているかもしれない。腰に一日の用意は提げているが、朝飯と午飯をかねて、麓の宿場まで戻ってみようか?

「……そうだ」

武蔵は、岩山を降りかけた。

その時である。

岩山の下から、

「あッ、いたっ」

と、ぶしつけな呶鳴り方をした者がある。

その声には、殺気があった。おとといの晩、いきなり身をかすめた棒の唸りに似ていた。はっと思いながら武蔵が岩につかまりながら下を覗くと、果たせるかな、声を投げて仰向いている眼はあの時の眼であった。

「――客人、追って来たぞ」

こう呼ばわる者は、駒ヶ岳のふもとの土民権之助で、見ると、あの百姓家にいた母親までを連れている。