Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

「ウム!」

と独り返辞をしながら、くるりと、踵をめぐらし、

「――立合おう」

と、いきなりいった。

権之助は手綱を捨て、

「承知か」

即座にもと思ったらしく、もう足場を見まわすと、武蔵は、意気ごむ相手を眼の外に措いて、

「じゃが――母御」

牛の背へいうのである。

「万が一のことがあってもよろしいか。試合と斬合とは持ち物がちがうだけで、紙一重ほどの相違もないが」

念を押すと、老母は初めてにこと笑って、

「御修行者、お断りまでもないことを仰せられる。杖を習び出してからもう十年。それでもなお、年下のあなたに負けるような伜であったら、武道に思いを断つがよい。――その武道に望みを断っては、生きるかいもないといいやる。さすれば、打たれて死んだとて当人も本望である。この母も、恨みにはぞんじませぬ」

「それまでにいうならば」

と、武蔵は、眸を一転して、権之助の捨てた手綱をひろい、

「ここは往来がうるさい。どこぞへ牛を繋いで、心ゆくまで、お相手いたそう」

いの字ヶ原のまっただ中に、枯れかけている一本の巨きな落葉松が見える。あれへと指して、武蔵はそこへ牛を導き、

「権どの。支度」

と、促した。