Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
五
「そうしましょうかね。武蔵さん、暗いから気をつけて来てください」
「では、朝までお借りしようか」
武蔵は起って、お甲の後から暗い縁を尾いて行った。
五
彼の寝た板小屋は、谷間の崖に建てた丸太の上に支えられていた。夜なのでよくわからないが、おそらく床下は、すぐ千仭の谷底へ通じているのではあるまいか。
霧が降ってくる。
滝水が吹きつけてくる。
ぐわうという度に、寝小屋は、船のようにうごいた。
――お甲は、白い足を、簀の子にしのばせて、そっと、前の炉部屋へもどって来た。
炉の火を見つめて、考えこんでいた藤次が、するどい眼を振向けて、
「……寝たか」
と、問う。
「寝たらしいよ」
お甲は、側へ膝を立てて、
「どうする、え?」
と藤次の耳へいう。
「呼んで来い」
「やるかえ」
「あたりめえだ。慾ばかりじゃねえ、彼奴を殺ってしまえば、吉岡一門の仇を取ったということにもなる」
「じゃあ、行って来るよ」
どこへ行くのか。
お甲は、裾を端折って、戸外へ出て行った。
深夜である。深山である。真っ暗な風の中を、驀しぐらに駈けてゆく白い足と、うしろに流れる髪の毛とは、魔性の猫族でなくて何であろう。