Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

「ぐっすりだよ……」

藤次は、しめたというように、縁先から裏へ飛び出して、谷間の闇を覗きこみ、手に持っている火縄をチラチラ振って見せた。

それが合図であった。

武蔵の眠っている一棟の板小屋は、それと共に、崖の中途で、支えている床柱を外され、ぐわうーんと凄い音をたてながら、棟も板も、乱離となって、千仭の底へ呑まれてしまった。

「それっ」

鳴りをひそめていた賊は、もう仕止めた猟人が姿を見せるように、公然と、声をあげて、猿の如く思い思いに、谷底へ辷り降りて行った。

手に余る人間と見れば、彼らはいつも、こうして寝小屋もろとも、旅人を谷へ落して、その死骸からやすやすと、目的の物を奪り上げていた。

そして簡単な寝小屋はまた、次の日のうちに、絶壁へ懸出して組むのであった。

谷底にも一群の賊が、先へ廻って待っていた。寝小屋の板や柱がばらばらに墜ちて来ると、彼らは、骨に跳びつく犬のように、それへ集って、武蔵の死骸を求め始めた。

「どうした?」

上の人数も降りて来て、

「あったか」

と、共に探しまわる。

「見えねえぞ」

誰かいう。

「何が」

「死骸がよ」

「ばかあいえ」

しかしまた、やがて同じあぐねた声が放たれた。