Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「いよいよ、大蔵様にちがいないぞ」
と、城太郎は呟いた。
なぜならば、その頃、ここらの田舎の人や町人が、滅多に煙草など持っているはずがない。煙草の味を教えたのは、南蛮人だそうであるが、日本で栽培するようになってからでも、高価なので、上方あたりでも、よほど贅沢な者でなければ喫わない。値だんばかりでなく、日本人の体はまだ喫煙の害に馴れないので、眩いを起したり、泡をふいたりする者が多いので、美味いけれど、魔薬であると考えられている。
だから、奥州の伊達侯などは、六十余万石の領主であり、大の煙草の好者といわれているが、祐筆の御日常書によると、
朝、お三ぷく
夕、御四ふく
御寝、ご一ぷく
などと誌されてある。
そんなことは、城太郎の知ったわけのものでないが、城太郎にも、滅多な者が喫うべきものでないことは分っている。――また、それを奈良井の大蔵が、日常時をきらわず、陶器製の煙管で喫っていたことも見ていた。もっとも大蔵が喫っているのは、木曾一の大家の主人であるから、不審には思わなかったが、今、首塚の松の下で、スパリスパリと喫っている蛍火ほどな煙草の火には、恐ろしい疑念がわいた。