Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
お杉はふと、自分にもやがて来る命日を考えた。それはすぐ、又八を考えることでもあった。
「さ、少しは飲けるでしょう。水の上だが、わしらがついているから、安心して酔うておくんなさい」
「御命日なのに、酒をのんでも、悪いことはござりませぬか」
「六方者は、嘘や飾りの儀式が大嫌い。それに此方人は、門徒だから、物知らずでいいのです」
「久しゅう、酒も飲まなんだ。――酒はたべても、このように、暢々とはのう」
お杉は、杯を重ねた。
隅田宿の方から流れてくるこの大河は満々として広かった。下総寄りの岸の方には、鬱蒼とした森が折り重なり、河水に樹の根の洗われている辺りは、水もまっ蒼な日陰の瀞になっている。
「オオ、鶯が啼きぬいて」
「梅雨頃には、昼間も、昼ほととぎすが啼きぬくが……まだ時鳥は」
「ご返杯じゃ。……親分様、きょうは婆もよい供養のおこぼれにあずかりましたわえ」
「そう、欣んでくれると、わしも有難い。さあ、もっと重ねぬか」
すると、櫓を漕いでいるお稚児が、羨ましそうに、
「親分、こっちへも、少し廻してもらいてえもので」
「てめえは、櫓がうまいから連れて来たのだ。行きに飲ますとあぶねえから、帰りにはふんだんに飲め」