Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「無礼を許されよ」
佐渡は、横になって、白い鬢づらへ手枕をかった。
江戸の藩邸は、彼の体を寸暇もなく忙殺させる。彼は、寺詣りを口実に、ここへ遁れてくるのかもしれない。野風呂を浴びて、田舎醸りの一酌をかたむけた後、手枕のうつらうつらに、蛙の声を聞いていると、何もかも現世のものでなくなるように忘れてしまう。
こよいも佐渡は此寺へ泊って、遠蛙の音を聞いていた。
寺僧は、そっと、銚子や膳を下げてゆく。従者は、壁際に坐って明りの瞬きに、手枕の主人が、風邪をひきはすまいかと、案じ顔にながめていた。
「ああよい心地。このまま涅槃に入るかのようじゃ」
手枕をかえた機に、侍が、
「おかぜを召すといけません。夜風は露をふくんでおりますから」
注意すると、佐渡は、
「捨てておけ。戦場で鍛えた体、夜露でくさめをするような気遣いはない。この暗い風の中には、菜の花のにおいが芬々とする――其方たちにも香うか」
「とんと、分りませぬ」
「鼻のきかぬ男ばかりじゃの。……ははははは」
彼の笑い声が大きいせいでもあるまいが、その時、四辺の蛙の声がハタと止んだ。
――と思ううち、
「こらっ、童ッ! そんなところへ立ってお客様のお居間をのぞいてはならん」