Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
とたんに滝のような汗がながれてくる。心臓が、どきどきと、あばれてうつ。
「……アア、畜生、どこへ行ったろう?」
逃げたら逃げたでいいが、狐に傷を負わせたことが、不安になった。
「きっと、何か、仇をするにちがいないぞ」
という覚悟を、持たざるを得なかった。
果たせるかな。――すこし気が落着いたと思うと、彼の耳に、妖気のこもった音が聞えて来た。
「……?」
伊織は、キョロキョロ眼をくばった。化かされまいと、心を固めた。
妖しい音は近づいて来る。それは笛の音に似ていた。
「来たな……」
伊織は、眉に唾を塗りながら、用心して起ち上がった。
見ると、彼方から女の影が夕靄につつまれてくる。女は、羅衣の被衣をかぶり、螺鈿鞍を置いた駒へ横乗りに騎って、手綱を、鞍のあたりへただ寄せあつめていた。
馬には、音楽が分るとかいうが、いかにも笛の音が分るように、馬上の女がふく横笛に聞き恍れながら、のたり、のたりと、緩い脚を運んで来るのだった。
「化けたな」
と、伊織はすぐ思った。
うすずく陽を背後にして、馬上に笛をすさびながら来る被衣の麗人は、まったく彼ならでも、この世の人とも思えなかった。