Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
七
七
伊織は、青蛙のように、小さくなって、草むらに屈みこんでいた。
そこはちょうど、南の谷へ降りる坂道の角になっていた。――もし女が馬上のまま、ここまで来たら、不意に斬りつけて、狐の正体を剥いでやろう――と、そう考えていたのである。
真っ赤な日輪は今、渋谷の山の端に沈みかけて、覆輪をとった夕雲が、むらむらと宵の空をつくりかけていた。地上はもう夕闇だった。
――おつうどの。
ふと、何処かで、そんな声がしたようだった。
(――おつウどの)
伊織は、口のうちで、口真似してみた。
疑ってみると、その声も、何だか人間放れのした五音であった。
(仲間の狐だな)
狐の友が、狐をよんだ声にちがいない。――伊織は、近づいて来る騎馬の女を、狐の化けたものと、飽くまで信じて疑わないのであった。
草の中からふと見ると、馬の背へ横乗りになった麗人は、もう坂の角まで来ていた。
この辺りには、樹が少ないので、馬上の姿は、宵闇の地上からぼかされて、上半身は、赤い夕空に、くッきりと明瞭に描かれていた。
伊織は、草むらの中に、身づくろいをしながら、
(おらの隠れていることを知らないな)
と、思って、刀をかたく持ち直していた。