Japanische Klassiker mit Furigana
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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
Lesen Sie 第二の接吻 (だいにのせっぷん) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.960 Zeichen · 247 Bildschirme
八
八
二人の落ちるのを見たとき、倭文子は、
「あっあっ!」と悲鳴をあげながら、崖端へ走り出した。二人の落ちようとする身体を抱き止めようとでもするように。彼女は、そこで身をかがめ、崖下をのぞき込んだが、暗い崖下には砕けちった白い波が、ごうごうとまき返っているだけで、二人の姿はおろか、声さえもきこえなかった。
「村川さん!」
彼女は、初めて村川の名を呼んだ。だが、それは烈しい夜の海風に吹きとばされて、しぶきが、彼女の面を打つだけだった。
倭文子は、自分のためにこの恐ろしい事件が起って来たのを思うと自分も二人の後を追いたいとさえ思ったが、先刻からの恐ろしさに、身体がガタガタとふるえて来て、夜の海の恐ろしさが、今更のように身にしみて来た。崖端に、倒れたまま、気が遠くなって、人を呼ぼうという気さえ起らなかった。
何分か経った。人の気配がするので、ふと目を上げると、三尺はなれないところに、満身ズブぬれになった村川が立っていた。
「あっ!」
倭文子は、狂喜のように、村川にすがりついた。
「ぬれますよ。ぬれますよ。」
村川は、倭文子の白い手をそっとはずした。名状しがたいうれしさに湯のような涙が倭文子の冷え切った頬を流れた。