Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme

Aozora Bunko

無論、研げてはいまい。

そう思って、小次郎は、座敷の真ん中に坐って、鞘を払ってみたところが、研げていないどころではない――晃々と百年の冴えを革めて、淵の水かとも、深くて蒼黒い鉄肌から――燦として白い光が刎ね返したのである。

痣のようにあった、うすい錆の斑紋も消えているし、血あぶらにかくれていた錵も、朧夜の空のように、ぼうっと美しく現れていた。

「……まるで、見直してしまったな」

小次郎は、飽かず看入っていた。

ここの座敷は、月の岬の高台にあるので、芝の浜から品川の海は元より、上総沖から湧きあがる雲の峰とも坐ながらに対い合っていた。――その雲の峰の影も、品川の海の色も、剣の中に溶けていた。

「お留守かの。――小次郎どのはお在ででないか」

間を措いていた戸外の声が、ふとまた、柴折戸からそう訪れていた。

「誰方か」

刀を鞘におさめて、

「小次郎はおりますが、用事なら柴折から縁へ廻ってくだされい」

いうとすぐ、

「やれ、いるそうな」

と、いう話し声がして、お杉ばばと、一名の無法者が、縁先へ姿をあらわした。

「誰かと思うたら、ばば殿であったか。暑い日中を、よう見えたの」