Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
と、小侍の曳いてきた一頭の月毛のうえに身を預けた。
駒は、お通を乗せて、中門から大手のゆるい坂を降り始めた。もちろん、宇治までは、一名の小侍が、口輪を把って駒に従いて行く。
お通は、駒の背から、人々の姿を振向いて、礼を返した。その顔に、崖から伸びている梅の横枝が触った。二、三輪、匂って散った。
「……おさらば」
と、声には出さなかったが、兵庫の眼はいっていた。坂の途中で散った梅のにおいが、その辺りまで微かにうごいて来た。兵庫はたまらない寂しさと――同時にその苦しい気持とは反対な彼女の幸とを祈っていた。
――見ているうちに、彼女のすがたは、城下の道へ小さくなって行った。兵庫はいつまでも立っていたので、彼のみをそこに置いて、辺りの者はみな去ってしまった。
(武蔵とやらは羨ましい)
寂しい胸の裡で、われとも非ず呟いていた。――すると、彼のうしろに、いつの間にか、ゆうべ荒木村へ帰ったという丑之助が立っていた。
「――兵庫様」
「オ……。童か」
「はい」
「ゆうべ、帰ったのか」
「おっ母が、案じますで」
「月ヶ瀬を通って?」
「はあ。あそこを越えずにゃ村へ行かれねえで」
「恐くなかったか」