Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme

Aozora Bunko

雲母光りの夜霧の海である。

武蔵は、一足遅れて、そこへ登って来た。計らずも、愚堂と又八が、足を止めていたので、その影を間近に見もし――先からも見られて、何がなし、ぎくとした。

愚堂も無言。

武蔵も無言だった。

しかし、こう眸を向け合ったのは実に何十日目か。

武蔵は、咄嗟に、

「今――」

と、思った。

京都はもうそこだ。妙心寺の禅洞ふかくかくれてしまわれたら、再びまた、幾十日を待ったら禅師に接する折があるかわからない。

「……もしっ!」

彼は、遂に叫んだ。

だが、余りに思いつめていたので、その思いに、肋骨はふくらみ、声はつまって、子が親に、いい出し難いことをいおうとする怖れにも似て、おずおずと、前へ出るにも、足は竦みがちだった。

「……?」

何だ――。とも訊いてくれないのだ。

まるで乾漆で出来てるような愚堂の顔から、眼だけが白く、それを憎むかのようにするどく、武蔵の影を見つめるだけだった。

「もしっ。和上っ……」

二度目にさけんだ時は、武蔵はもう前後も弁えなかった。ただ燃え苦しむ火のかたまりのように駈け転んで行って、愚堂の跫もとへ、

「一言っ。一言を! ……」