Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme

Aozora Bunko

(あっ、朱実)

と、胸打つほどのものは、恐らく自分だけしかあるまいと思う。偶然ではない、生命と生命との交流は、同じ土に息づいている以上、いつかこうあるのが本当である。

それはさて措き。

変り果てた朱実には、つい一年余ほど前の色も姿態もなかった。汚い負紐で、背なかには、二歳ばかりの嬰児を背負っていた。

朱実の産んだ児!

又八の胸には、まずそれがどきっと響いたにちがいない。

朱実の面も、見ちがえるほど、痩せている。それに、髪も埃のままの束ね髪で、木綿筒袖の、見得も風もないのを裾短に着、腕には重たげな手籠をかけ、口達者な長屋女房の揶揄半分な囀りのなかに、物売りの腰を低めているのだった。

手籠の中には、海草だの、蛤や鮑などが売れ残っていた。背なかの児が、時々泣くので、籠を下へ置いては、子をあやし、子が泣きやむと、女房たちへ向って、商いをせがんでいるふうだった。

(……あ。あの児は?)

又八は、両手で、自分の頬をぎゅっと抑えた。胸の裡で、歳月をかぞえた。二歳としたら? ああ江戸の時分になる。

――と、すれば。

数寄屋橋の原で、奉行所衆の割竹の下に、莚をならべて、共に百叩きに会ったあげく、西と東に放たれたあの時は――もう彼女の肉体に、今の子どもは胎内にあったわけである。