Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme

Aozora Bunko

十一日の午頃である。

門司ヶ関から小倉へはいる城下口の一膳飯屋の前を、乳呑み児をあやしながら、行きつ戻りつしている女がある。

つい先頃、大坂の河端で、ふと見かけた又八が、後を追って行き会った、朱実であった。

旅の空が、嬰児も淋しくてか、泣きやまないので――

「ねむたいか。ねんねしや。ねんねしや。オオ、よち、よち、よち……」

乳ぶさをふくませ、足拍子を取って、見得もない、粧いもない、子があるばかり。

変れば変るもの――と、以前の彼女を知る者は思うであろう。だが彼女自身には、この変化も、今の生態も、何の不自然もない姿だった。

「おお、坊や、寝たか、まだ泣いているのか。――おい朱実」

飯屋の中から出て来て、こう呼んだのは又八だった。

法衣を返して、俗になったのもついこの間のこと。やがて髪を蓄えるつもりの道心頭を、頭巾で巻いて、渋染の袖無。あれからすぐ夫婦して大坂を立ち、道中の路銀とてないので飴売りの胴乱をかけて、子の乳となる妻の糧を、一銭二銭と働きながら、きょうやっと、小倉まで辿り着いたところだった。

「さ。おれがかわって、抱いてやる。はやく御飯をたべて来い。