Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
磯松の陰から、縫殿介も、彼方を見ていた。
御浜奉行の休み所に、乗って来た駒を繋いで、佐々木巌流は、しばらくそこに休息を取っていたものとみえる。
そこの役人達にも見送られ、巌流は、日頃の愛馬を、託していた。――そして供として、内弟子の辰之助一名を連れ、砂を踏んで此方の舟のほうへ歩いて来た。
「…………」
人々は、巌流の姿が、近づいて来るにつれ、粛として、おのずから列をなし、彼の道を開いていた。
それと人々は、その日の巌流の晴の扮装に恍惚として、自分達までが武者振いのようなものを覚えた。
巌流は、浮織の白絹の小袖に、眼のさめるような、猩々緋の袖無羽織をかさね、葡萄色の染革の裁附袴を穿いていた。
足拵えは、もちろん、草鞋――すこし潤してあるかに見える。小刀は日頃の物であったが、大刀は、仕官以後は遠慮して差さなかった例の無銘――しかし肥前長光ともいわれている――愛刀物干竿を、久しぶりに、その腰間に、長やかに横たえていた。
その刀は、三尺余もあるので、見るからに業刀と思われ、送りの人々の眼をみはらせたが、より以上、その長剣がすこしも不似合でない彼の優れた骨がらと、猩々緋の真っ紅なのと、色の白い豊頬な面と、そして眉もうごかさない落ちついた態度の美に――何か荘重なものを見ていた。