Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
「……おさらば」
小次郎へも。
彼方の床几場の方へも。
そこから手をついて、一礼すると武蔵の姿は、一滴の血もついていない櫂の木太刀を提げたまま、さっと北磯のほうへ走り、そこに待っていた小舟の中へ跳びのってしまった。
どこへ指して、どこへ小舟は漕ぎ着いたか。
彦島に備えていた巌流方の一門も、彼を途中に擁して師巌流の弔合戦に及んだというはなしは遂に残っていない。
生ける間は、人間から憎悪や愛執は除けない。
時は経ても、感情の波長はつぎつぎにうねってゆく。武蔵が生きている間は、なお快しとしない人々が、その折の彼の行動を批判して、すぐこういった。
「あの折は、帰りの逃げ途も怖いし、武蔵にせよ、だいぶ狼狽しておったさ。何となれば、巌流に止刀を刺すのを忘れて行ったのを見てもわかるではないか」――と。
波騒は世の常である。
波にまかせて、泳ぎ上手に、雑魚は歌い雑魚は躍る。けれど、誰か知ろう、百尺下の水の心を。水のふかさを。