Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
くどいという顔つきはしなかったが、武蔵のことばは至って短い。
「よい」
ぽつりといって、
「――では後刻」
灰屋の門内へ入りかけると、兵助はまた追いかけにいい浴びせた。
「武蔵、それまでは、この灰屋にいるのだな」
「いや、宵には、六条の遊廓を案内して下さるそうな。いずれかにいる」
「六条? よし。――六条かこの家かどっちかにいるのだな。刻限が遅れたら迎えをよこすぞ。よもや卑怯な振舞はなかろうが」
背中で聞きながら、武蔵は灰屋の前栽へはいって、すぐ門を閉めていた。一歩そこへはいると騒音の世間は百里も後になったように、いとも静かな生活の天地をこの家の見えない塀が囲んでいた。
低い根笹と筆の軸ほどな細竹とが、自然の小道のように配られてある石から石への通路を程よく湿らせている。歩むにつれて見えて来る母屋、表、離室、亭、すべてが旧家の燻みと大まかな深さを持っていて、それを繞る松はみな背が高く、屋を越してこの家の富貴を奏でてはいるが、下へかかって来る客へ対して、決して尊傲なふうは見えない。
九
どこかで蹴鞠を蹴る音がしていた。公卿屋敷だとよくその音を塀の外からも聞くが、町人の家にはめずらしいと武蔵は思った。