Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
生涯のこと、ここの一歩から、分れ目を持つことになる。
――道は三つ。
――どう行こうか。
当然、武蔵はそこで慎重に考えそうなものであったが、ひらりとやがて身軽に動き出した彼の影には、そんな重苦しげな迷いの影は従いていない。
――ひら――ひら――ひらと木の間や小川や崖や畑を跳ぶように越えて、月の下を見えつ隠れつ足早に、行きたい方へ歩いている。
では、三道のうち、いずれを選んだかというと、彼の足は、一乗寺方面とは反対な方角へ向いていた。三つの道のいずれも選ばなかったのである。その辺はまだ里ではあったが、狭い小道を通ったり畑を横切ったりして、一体、どこを目ざして歩いて行くのかちょっと気が知れない。
なんのためか、わざわざ神楽ヶ岡のすそを越え、後一条帝の御陵の裏へ出る――この辺、ふかい竹藪だった。竹の密林を抜けるともう山気のある川が月光を裂いて里へ走っている。――大文字山の北の肩が、もう彼の上へ、のしかかって来るように近かった。
「…………」
黙々と、武蔵は、山ふところの闇へ向って登ってゆく。
今、通って来た右側の樹立の奥に見えた築地と屋根が、東山殿の銀閣寺であったらしい。