Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「そこの気持が自分にも分らないんです。ただ、ひょっとしたら武蔵様に会えやしないかと思って」
「無駄なこった」
ひどくそこで、又八は言葉に力をこめ、万に一つも勝目のない武蔵の立場と、相手方の情勢とをいって聞かせた。
すでに清十郎から小次郎と――幾人かの男性を通って、処女であったきのうの自分が、もう思い出のものになっている彼女には、武蔵を考えたり想ったりすることも、もう処女であった頃のように、未来の花を夢想して考えることはできなくなっていた。肉体的にその資格を失った自分を冷たく諦観して、死にはぐれ、生きはぐれながら、次の道をさがしている迷える雁の一羽に似ていた。
だから彼女は、又八から、武蔵が今刻々、死の危機へ近づいている様子を如実に聞いても、泣くほどな気持にはなって来なかった。――ではなぜ、こんなところまで、恋々と彷徨ってきたかと訊かれれば、その矛盾も説明することのできない彼女であった。
「…………」
行くての方角を失ったような眸をして、朱実は、又八のことばを、夢うつつに聞いていた。又八は、その横顔を黙って見ていた。――なにかしら彼女の彷徨っている所と、自分の彷徨っている所とが、似ているように思われてならない。