Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「三井寺の上に出るがな」
「三井寺といえば、大津じゃの……。そこより他に、裏道はないか」
「ないこともないが、おばあさんは一体、どこへ行きなさるのじゃ」
「どこへでもかまわぬ。わしはただ、わしを捕まえて離さぬ悪者の手から逃げたいのじゃよ」
「四、五町ほど先へ行ったら、北へ降りる小道があるで、そこをかまわず降りて行けば、大津と坂本の間へ出るがな」
「そうか……」
と、婆はそわそわして、
「では、誰か後から追いかけて来て、お許になにか訊いても、知らんというてくれよ」
いい捨てると、婆は、怪訝な顔しているその女の歩みを追い越して、跛行の蟷螂が急ぐように、先へ駈け去ってしまった。
「…………」
武蔵は見ていた。苦笑しながら岩蔭を起ってしずかに歩き出した。
瓶を抱えてゆく女房のうしろ姿が先へ見えた。武蔵が呼びとめると、女は立ち竦んで、なにも問わないうちから、なにも知りませんと答えそうな顔つきをした。
だが武蔵は、そのことには触れないで、
「おかみさん、おまえの家は、この辺のお百姓か、それとも木樵か」
「わしの家かえ? わしの家は、この先の峠にある茶店だが」
「峠茶屋か」
「ヘエ」