Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「……あれだな」
と思う。
近づいて、彼は牛の背から降りた。手にはここの女房からの届け物である乳の入っている瓶を持っていた。
「ゆるせ」
軒先の床几を占めると、土泥竈にせいろうをかけて、木を燃やしていた老婆が、ぬるい茶を汲んでくる。
武蔵は、その老婆に向い、ここの女房に逢って、途中から使いを頼んだ仔細を告げた。そして乳の瓶をも渡そうとすると、
「へえ、へえ」
とばかり聞いていた老婆は、耳が遠いのか、その瓶を持たされると、
「これはなんでござりまするか」
と、不審った。
武蔵が、これは自分の曳いている牝牛の乳で、ここの女房が病人の客とやらへ飲ませたいためにこれへ搾ったものだから、すぐその病人へ与えるがよかろうと、いい聞かせると、老婆は、
「ほう? ……乳でござりまするか……ほう?」
まだ分ったやら分らないような顔つきして、両手に瓶を支えていたが、やがて、処置に窮したように、
「――お客さあっ、奥のお客さあっ、ちょっくら来ておくんなされや。わしにゃあ、どうしてええか分らんがな」
狭い小屋の奥をのぞいて、唐突にどなった。
五
老婆に呼びたてられた奥の客なる者は、奥にはいなかった。