Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「そうだ、同い年だったなあ」
抱き合っている友と友を、牝牛の甘い乳の香がつつんでいた。幼心を二人ともそれにも思い出されていたかもしれなかった。
「偉くなったなあ、武やん。――いや今では、そう呼ばれても自分みたいな気がすまいな。おれも武蔵と呼ぼう。いつぞやの下り松の働き、その前のことども、噂は始終耳にしていた」
「いや、恥かしい。まだまだおれは未熟者だ。世間の奴が、余りにも不出来すぎるのだ。――だが又八、この茶店に泊っているという客は、おぬしのことか」
「ウム……実は江戸表へ行こうと思って都を立ったが、少し、都合があって十日ばかり」
「じゃあ、病人というのは? ……」
「病人」
又八は口籠って、
「あ――病人というのは、連れの者だ」
「そうか。……なにしろ無事な顔を見てうれしい。いつか、大和路から奈良へゆく途中で、城太郎からおぬしの手紙を受け取ったが」
「…………」
急に、又八は眼を伏せた。
あの時、手紙の中に、傲語して書いた言葉の一つでも、実行されていないことを思うと、彼は、武蔵の前に、面を上げる勇気も出ない。
武蔵は、その肩に手をかけた。
ただわけもなく懐かしいのだ。